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これで分かった!完全ワイヤレスイヤホンに必須の技術「NFMI」とは?

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完全ワイヤレスイヤホンが最近ものすごい勢いで流行っていますね。今までは、バッテリーが小さいため駆動時間が短くて使えないとか、何よりも音が悪くて、特に音切れが多かったのが、今まで流行らなかった原因でもあると思います。

ここ最近、その完全ワイヤレスイヤホンの数が増えてきて、選択肢の幅が拡がってきた。そんな完全ワイヤレスイヤホンで、今、特に注目されているのが、「NFMI技術」です。

今や、完全ワイヤレスイヤホンには必須の技術だと言われています。

でも、「NFMI技術」ってなんなの???何がいいの???と疑問も多いはず。

そんなあなたに、今回はNFMI技術とは何か、どんなすごい技術なのかご紹介したいと思います。

「NFMI技術」と「Bluetooth」の違いなどがこれで分かるようになります。

「NFMI技術」とは

「NFMI技術」は、電磁気を使用した無線技術で、NXPセミコンダクターズ社の「MiGLO」という技術が「NFMI」を使用しています。

これから「NFMI」の特徴をまとめていきます。

NXPセミコンダクターズ社の「MiGLO」技術

出典:NXPセミコンダクターズ社「MiGLO」プロモーションビデオ

NXP社の「MiGLO」を紹介したプロモビデオです。ヒアラブルと言えば、NXPですね。

完全ワイヤレスイヤホンの仕組み

「Bluetooth通信」

完全ワイヤレスイヤホンは、大きく分けて2種類あります。

Bluetoothオンリー型

完全ワイヤレスイヤホン仕組み(Bluetoothオンリー)

完全ワイヤレスイヤホン仕組み(Bluetoothオンリー型)

Bluetoothオンリー型の完全ワイヤレスイヤホンの仕組みは、スマホとの接続は1対1のBluetooth通信接続です。

Bluetoothの規格上、オーディオの右チャンネルと左チャンネルの音声信号は、まとめて送られ1対1での通信になり、1対2の通信で左右それぞれのオーディオデータを送れない規格なんです。

したがって、イヤホンの左(もしくは右)のBluetoothチップに左右チャンネルのオーディオデータが一緒に伝送されます。

次に、受信した左右のオーディオデータを左と右のオーディオに分けて、またBluetooth通信で右チャンネルのみのオーディオデータを右耳イヤホンに伝送されます。

スマホとの通信、両耳間の通信に、それぞれBluetooth通信が使用されています。

この時、環境によってはスマホとのBluetooth通信の接続が切れてしまったり、イヤホン同士のBluetooth通信の接続が切れてしまう場合があります。

Bluetooth+NFMI技術

完全ワイヤレスイヤホン仕組み(Bluetooth+NFMI)

完全ワイヤレスイヤホン仕組み(Bluetooth+NFMI)

 

NFMI通信を採用していても、スマホとの無線接続はBluetoothが使われています。前述した通り、Bluetoothの規格上左右のオーディオデータは、左右ch一緒に伝送され、左耳(または右)のイヤホンに送られます。

左耳のイヤホンでオーディオデータを受信した後、左右のチャンネルに分け、右チャンネルのオーディオデータのみ今度はNFMI通信で右耳イヤホンに伝送されます。

この時、Bluetoothと違うのは、両耳の間はNFMI通信で行われ、NFMI通信は頭の中を通っていきます。一方、Bluetoothの電波は、頭の中を通ることが出来ないんです。

NFMI通信は、体の中を通ることができるんです!

最終的に、左と右のオーディオがスピーカから再生されるという仕組みです。

この体を通り抜ける特徴については、後述します。

環境によっては、スマホとのBluetooth通信の接続が切れてしまうこともありますが、NFMI通信は切れることないので、右耳だけ接続が切れるということは無いんです。

ただ、スマホとのBluetooth通信の接続が切れると、両耳の音が聞こえなくなります。

完全ワイヤレスイヤホンの課題

完全ワイヤレスイヤホンの課題

人体への電波吸収の懸念

無線機器を使っていて気になるのが、特に携帯電話では、電波が脳に吸収されて良くないと言われています。

携帯電話が出てから33年になりますが、携帯電話の電波が原因で健康に被害が出たという事例は聞いたことが無いと思います。

ですが、無線エネルギーは、水に吸収されやすいと言う特徴があるので、確かに脳への影響が懸念されるのはやむを得ないところでしょう。目に見えないものなので、何らかの形で影響が出ているかもしれません。

無線エネルギーの人体への吸収度(SAR)は、できる限り低いに越したことはありません。

参考比吸収率(SAR)とは(一般社団法人電波産業会 電磁環境委員会)

電波干渉

ISM帯域と呼ばれる2.4GHz帯や5GHz帯は、全世界共通の無線帯域として免許なしで使用することができる無線帯域です。完全ワイヤレスイヤホンのほとんどがこのISM帯の「Bluetooth(2.4GHz)」を使用しています。

もちろん他の無線機器も同じISM帯域を使用しているので、異なる機器同士で電波の干渉が起きて、時々ノイズが発生したり、接続が切れてしまうことがあります。

Bluetoothのオーディオ機器で、こういった電波干渉が起こると、せっかくのいい曲もブチブチ切れてしまい、幻滅ですね。

ドロップアウト

こういった電波干渉などが原因で音切れを起こすことを、専門的には「ドロップアウト」と呼ばれているものです。

オーディオ機器では、この「ドロップアウト」をいかに発生させないことが求められます。

一回のドロップアウトでも、せっかくの名曲も台無しになってしまうからです。

レイテンシー

Bluetoothのワイヤレスイヤホンで動画を見た時に、動画の人物が話した時の口の動きと、聞こえてくる音声にズレが発生して、動画の面白さを半減してしまうことって無いですか?

あれは、Bluetooth通信によるもので、データ伝送や音声を伝送する際に遅延が発生するからなんです。

そのデータ伝送の遅延が原因で、画像再生と音声の出力がズレてしまうからなんです。これを専門用語で、「レイテンシー」と言います。

この「レイテンシー」を極力低くすることも完全ワイヤレスイヤホンでは課題となっています。

消費電力

さらに、完全ワイヤレスイヤホンは耳に装着するので、非常に小さな筐体になります。そのため、内蔵されるバッテリーのサイズも小さくなります。

バッテリーが小さいと、もちろん機器の駆動時間に大きく影響します。

完全ワイヤレスイヤホンの標準的な駆動時間は、2時間〜3時間程度です。2時間は短すぎると感じますし、最低3時間はないと直ぐに電池が切れて、イライラが募ります。

特に、小さい筐体の機器は、電池駆動時間との戦いですね。

「NFMI技術」の特徴と利点、完全ワイヤレスイヤホンの課題を解決!

1. 「NFMI技術」の原理

NFMIとは、Near Field Magnetic Induction:近距離磁気誘導の略で、原理としては小学校の時に習った電磁石の原理とコイルの相互誘導という現象を利用したデータ通信技術です。

普通、無線機器(携帯電話、BluetoothやWifi)が使う無線通信では、「電磁波」を使います。

少し難しい話になりますが、電場と磁場が時間的に変動し、それが波動となって伝わっていくのが「電磁波」なんです。

NFMI原理

NFMI原理 相互誘導

一方、「NFMI」では、磁場、磁界のみを使います。磁石を砂鉄の上に置くと、磁石の+と−をぐるっと輪を描くあの模様(磁界)です。

電磁石は、電線やコイルに電流を流すと、磁界が発生して、コンパスの針を動かします。

このコイルに、別のコイルを近づけると、発生した磁界が、近づけたコイルに影響を与えて電流が流れます(電磁誘導)。

このコイルからコイルへの電磁誘導のことを「相互誘導」という現象ですが、「NFMI」は、この相互誘導の現象をデータ通信に利用しています

電波が飛ぶ電磁波と異なり、磁界は非常に近距離に発生するので、通信距離は非常に短いのが特徴です。

電磁波を利用していないという点で、通常の無線通信とは大きく異なります。

2. 水に吸収されない

水に吸収されない

電磁波は、周波数が大きくなる程、水に吸収されやすい特徴があります。そのため、電波を利用した無線通信機器では、水中では電波が水に吸収されてしまうため通信出来ないんです。

一方、NFMIを利用した無線通信では、磁気は水に吸収されにくく、また使用している周波数帯も非常に低い周波数帯のため、NFMIは水には吸収されないと言っても過言ではありません

そのため、NFMIは水中でも無線通信が可能です。

人の体も水分で出来ているので、Bluetoothは人の体に吸収されて通信が困難になるんです。だから、Bluetoothの出力できる送信電力を目一杯に出力して、なんとか反対の右耳に送り届けようとします。

また、Bluetoothの完全ワイヤレスイヤホンは、プールなど周りが水の環境では、完全に通信出来なくなります。

「MiGLO(NFMI技術)」を採用した完全ワイヤレスイヤホンでは、防水機能のあるイヤホンは、プールでの使用も出来ちゃうんです。

「Bragi the Dash」は、スマホなしでも音楽を楽しめて(内蔵メモリに楽曲をダウンロードできる)、しかも水泳などのアクティビティもOKというから驚きです水泳が趣味の人はこれっきゃ無いですね。

Bragi the dash
市場価格 30,000円〜


218年11月19日更新:

2018年10月27日にソニーからWF-SP900が発売されました。ソニーの完全ワイヤレスイヤホンとしては、いくつか発売されていますが、NFMIモデルはこれで2機種目です。

Bragi The Dash同様、水泳も出来、4GBの内蔵メモリも備えている完全ワイヤレスイヤホンです。

音楽を聴きながら、水泳を楽しみたい人には、選択肢が増えたと言えます。

早速、私も購入しレビューしたので、参考にしてください。

WF-SP900
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ソニーの完全ワイヤレスイヤホン第二弾、NFMIモデルWF-SP900を満を持して投入してきました。 予約が10月に入って開始され、そして、やっと届きましたよ! 完全ワイヤレス、防水、連続再生時間6時間 ...

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3. 人体への影響

人の体は、約70%が水分でできていますが、「NFMI技術」が水に吸収されないことから、NFMIの磁気エネルギーも人体には吸収されないという特徴があります。

では、人体への吸収度はどのくらいなのか見てみましょう。

以前の記事でBragi the Dashの紹介で、「NFMI技術」の人体吸収について紹介しています。併せて参考にしてください。

Bragi the Dash外観
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参考比吸収率(SAR)とは(一般社団法人電波産業会 電磁環境委員会)

NXPのMiGLO技術は、補聴器メーカーであるフォナック社と共同で開発していて、最初は補聴器向けの技術だったようです。

医療機器である補聴器であるがゆえに、特に人体への無線エネルギーの影響を念頭に開発していたようです。

The typical SAR rating emission of mobile telephone ranges from 0.3 to 1.5 W/kg. Testing showed the Specific Absorption Rate (SAR) value of the wireless hearing aids to be less than 0.001 W/kg.

出典 Phonak hearing aids  https://www.phonakpro.com/content/dam/phonak/gc_hq/b2b/en/products/hearing_instruments/_documents/Factsheet_Wireless_Hearing_aids.pdf

フォナック社の調査では、NFMI通信の比吸収率(SAR)は、0.001W/kg以下だという報告があります。

具体的に、この数値はどのくらい低いのか、携帯電話やBluetooth通信の比吸収率、総務省の基準値レベルと各国の基準値を例に比較してみると。。。

携帯電話 平均500〜1500mW/kg
Bluetooth通信情報なし(*)
MiGLO(NFMI通信)1mW/kg

(*)残念ながら、BluetoothのSAR測定は、基準以下であれば報告の義務が無いことから、情報がありません。

対象国 各国の比吸収率(SAR)の基準値
日本2000mW/kg(10gあたり)
アメリカ1600mW/kg (1gあたり)
EU2000mW/kg(10gあたり)

上記測定値から、NFMIの比吸収率は、日本の基準値と比較すると、1/2000~1/1600倍となります。この基準値は、そもそも人体に影響が無いレベルだとして設定された基準値なので、NFMIは、その1/2000倍の吸収率ですから全く影響しないことが分かります。

参考資料

フォナックヒアリングエイド社

https://bluetooth.phonak.com/en-us/faq/bluetooth/where-can-i-download-specific-absorption-rate-sar-results-for-phonak-audeo-b-direct-bluetooth-hearing-aids/

NTTドコモ 携帯電話の比吸収率について
https://www.nttdocomo.co.jp/product/sar/

4. 電波干渉

「NFMI技術」が使用している周波数帯は、10.6MHzと非常に低い周波数帯を利用しています。NFMIとBluetoothなどが使用している周波数帯域が全く異なるので、Bluetoothや携帯電話、Wifi無線といった、無線機器と全く干渉しません。

電波干渉で無線接続が切れたり、繋がらないと言った問題は起こらないので、音楽鑑賞を妨げることはありません。

5. 通信距離

既に述べたことですが、「NFMI技術」は磁気を使用した通信のため、非常に通信距離が短いのが特徴です。

通常、20cm〜25cm程度くらいです。ちょうど、頭一つ分くらいですね。

通信距離が短いので、他の人の「NFMI通信」と干渉することもありません。

お互いが恋人同士で頭をくっつけて、寄り添うくらいなら、それぞれの「NFMI」搭載のイヤホンで干渉するかもしれませんね❤️

6. 消費電力

頭の脳(水分)に磁気エネルギーがほとんど吸収されないので、通信距離も両耳の間の距離だけで十分なんです。

だから、出力する磁気も最短、最小にすることが可能なんです。すなわち、余分な電力を使うことなく、通信できるので、消費電力がむちゃくちゃ低いのが特徴です。

このため、完全ワイヤレスイヤホンなどの小さい筐体のバッテリーでも、長時間駆動が可能になります。

「MiGLO」を採用した完全ワイヤレスイヤホンの駆動時間は平均4時間です。「Jabra Elite 65t」は、なんと5時間です。

使える電力が増えることから、電池の駆動時間の延長や、活動量計などのセンサーを追加したり、マイクなどの音声信号処理を追加すると言ったことも容易になります。

Bluetooth通信だけの単機能では面白く無いですよね。

JABRA(ジャブラ) Elite 65t
市場価格 15,000円〜

7. 低レイテンシー

NXPの「MiGLO」は、音声信号を決まった時間間隔で送信されるように設計されているようで、音の遅れは非常に小さく、発生しても非常に安定した遅れ(レイテンシー)になるんです。

さらに、前述したように他の機器からの干渉が無いので、再送を考慮する必要が無いことから、大きな音声信号の遅延は起こらないのが特徴だそうです。

特に、レイテンシーは、Bluetoothに比べ、1/100程度というから驚きです。

動画を再生する際に、動画の人物が話す唇の動きと、聞こえてくる音声がピッタリと合わせる(リップシンクと言います)ことが可能なんです。

右と左のイヤホンに、ドロップアウトも起きないので、左右のステレオ音声信号もピッタリと合っています。

Bluetoothの完全ワイヤレスイヤホンでは、右だけしか聞こえない、左だけしか聞こえない、右と左の音が交互にブツブツと切れると言った現象が起きますが、「MiGLO」では非常に安定した音楽が楽しめます。

まとめ

いかがだったでしょうか?これで、あなたも「NFMI技術」が完全ワイヤレスイヤホンのMustアイテムだということがお分かりになったと思います。

完全ワイヤレスイヤホンにとって、これからのキラー技術になること間違いありません。

現在「NFMI技術」は、NXP社の「MiGLO」しかありません。「MiGLO」を採用した完全ワイヤレスイヤホンは、以前の記事でも紹介しています。

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  • この記事を書いた人

ケーキ大好きクマさん

【ニックネーム】:ケーキ大好きクマさん 【性別】: 男 【血液型】: A 【職業】:外資系半導体メーカー 【出身地】:北海道旭川市 【趣味】:ピアノ、読書、電子工作、スマホアプリ開発、自転車、FX取引 プロフィール

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